奇妙な日々は続く

駅からの帰り道を歩いていると、後ろからやってきた黒い車が僕の横に停まり、運転する若い男が話しかけてきた。見るからに高級そうな車だ。男の身なりもかなりいい。
いかにも怪しそうなシチュエーションだ。でも幸い街灯があって人通りも多いところだし、まぁ道でも聞かれるのだろうと思って、足を止めた。

「これもらってくれませんか?」
そう言って、超高級(そうな)ペアウォッチを取り出し、見せてくる。
「30万くらいするやつなんだけど、伝票のミスで余ってしまってどうしようもなくて。さっき質屋に行ったけど、もう閉まってたから、誰でもいいからあげちゃおうと思って」
いや、怪しすぎるやろ。そう言った。はっきり、「話が怪しすぎますよ」と。
「そんなことないよ!爆弾が入ってるわけでもなし(笑)。僕はこういう会社の者です」
そう言って見せてきたのは、僕でも知っている銀座の高級時計店の社名が入った名刺。
話し方はラフだけど、決して丁寧の線からは離陸しないよう努めている感じもした。
「別に名前や住所を聞いたりしないし、君のことをつけてたわけでもない」
「たまたま歩いていたのが僕だっただけ、ってことですか?」
「そういうことだね。あ、あとこれもあげる。(そう言ってネックレスも取り出す)彼女にでもあげてよ」
「本当にただくれるだけっていうんだったらもらっときますけど」
「……うん、でもね、質屋に出して換金するんだろうから、僕らの飲み代くらいくれるかな?」
そらきたぞ。
「そういうことだったら、お返しします。僕はこの8000円のアウトレットの時計で十分満足してるし、お金にも全く興味ないから」
ちょっとかっこつけすぎたかもしれない。でも実際、他人からもらった時計を売ってまでお金をほしいとは思えなかった。
「お金に興味ないんだったら、なおさら飲み代くらいいいでしょ」
「もっとお金が好きな人を探してみてください」
「わかった」
男は急速に興味を失った様子で、窓を閉めるとすぐに車を発進させていった。


百歩譲って男がその会社の社員だったとして、なんで見ず知らずの人間に30万もするような時計を譲ろうと考えるんだろう。在庫が合わないことはそんなにやばいことのか? それに、彼らの“飲み代”っていくらなんだ? そのとき僕は1万円も持っていなかったけど、それを知ったら「やっぱやめた」ってことになったんだろうか?

まぁ、十中八九、新手のなんちゃらだろうと思う。
目利きのいい質屋に持って行けば、一目でパチモンと見破って、“飲み代”も回収できない程度の値段しかつけてもらえない。そんなことまで容易に想像ができる。


荏原町だか、旗の台だか、その辺で詐欺があったというニュースがあったら、少し注目して見てみてください。いや、案外、「降って湧いたウン十万円」なんてニュースだったりして(笑)。
仮にそうだとしても、もったいないことしたとも、うらやましいとも思わないけど。
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by match-ken | 2007-09-19 01:28 | 日々の生活  

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